第三歩目

 

 

「俯くな。前向いて歩け。」

 

いつだって自信が無かった

でもいつだって同じくらい自信が欲しかった

 

俯くのをやめた最寄り駅から家までの道

いつもと何ら変わらない道

 

それなのに見える景色が全然違った

すれ違う人々、疎らに開いているお店、

眩しすぎる車のライト、少し曇っている空

 

足元を見ていなくても案外躓かないものだ

 

気に入っているブーツのヒールが立てる音も

いつもと違って聞こえた

あまり好きではない輪郭を隠すために

後ろに行った顔回りの髪を必死に前に持ってくる癖も

何故だろう、このときは出てこなかった

 

別に誰も私のことなんて、見ていなかった

 

私という存在がとてもちっぽけに思えて

ちっぽけだと認識した途端何故か安堵が溢れた

 

あんなに狭いと思っていた世界

狭めていたのは私自身だった

 

呆れる程流した涙がまた、零れた

 

 

まだ下を見ないで歩くのは難しい

だけどそのうち、

前を向いて歩くのが当たり前になるだろう

 

そこに行くために真っ直ぐ、強く、

顔を上げて、踏み出し続ける

 

今日も、明日も、その先もずっと

 

 

乳母日記

乳母日記