3月の風

 

 

 

あの頃の私は、真っ暗闇の中にいた

毎日毎日一人で隠れて声を押し殺して泣いた

なんの為に生きているのか

なにが楽しいのか

なにが悲しいのか

よく分からなかった

いつしか"辛い"を"辛い"とも感じなくなり

私は泣き方を、生き方を忘れていった

 

 

 

 

"はるさん"という存在を知ったとき

なぜだろう、もの凄い勢いで私を駆け巡った、

この人だ!という直感

その直感が直感であるうちに依頼書を送った

だけど元来情けないほどの臆病者である私は

その時の心臓が1個とは思えないレベルの心拍音と

震えが止まらない指の感覚を、今でも覚えている

 

あっという間に迎えてしまった"依頼"の日

逃げたい、とどんなに願っても

全ての人間に平等に与えられる時間から

私だけが逃げられるはずもなかった

 

「緊張してるなぁ」

これが"はるさん"の第一声だった

 

 

 

 

はるさんの言葉は、私にとって"光"だった

 

暗く湿った私の世界に光が灯った気がしたのだ

忘れてしまわぬように、ノートに必死で書き留めた

はるさんがくれるたくさんの光の中から

必要な光を選んで、道を照らした

希望が持てた、これなら歩いていけそうだって

ぼたぼた零れた涙のお陰で皺が寄ったページは

私の"生きたい"という意志の証だ

この人生を諦めたくない、まだしがみつきたい

私の暗さを露にされる気がするから嫌いだった青い空は

案外、優しく柔らかい色をしていた

 

 

 

 

"生きやすく生きるためのヒントを得る"

依頼をしようと決めたときから今まで

ずっと変わらない目的

緊縛とかSMとか、私には縁のない世界だと思っていた

画面の向こうのファンタジーのままの予定だった

なのに

気が付けば私は

はるさんの縄が

痛いこと苦しいこと気持ち悪いことが

どうしようもなく好きになっていた

絶対に無理だと思っていたことを

こんなにも簡単に飛び越えてしまうことがあるのか

大袈裟かもしれないけれど、

もしかすると"無理"なんてことは

この世にひとつもないんじゃないかって

そんな気さえしてくる

 

 

 

こうして私の日常に現れた"非日常"は

とても魅力的で輝いていた

だけどそれは"非日常"だからであって

決して"非日常"に日常を覆われてはいけない

 

 

終わりは始まりだと言う

人生という名の道には、標識も信号もない

この道で本当に合っているだろうか

私は今どこを歩いているのだろうか

先が見えず、不安に押し潰されそうになることもある

だけど神からのお告げなんてないし

未来から私がタイムスリップしてくることもない

だけどヒントは、案外近くに転がっている

 

立ち止まっている暇はないはず

今起こす行動は、未来への希望の種だ

私は地味で名前もない雑草だけれど

それでもいつか小さくても綺麗な花が咲くと信じて

"光"の力を借りながら、希望の種を撒き続ける

 

 

 

 

 

乳母日記

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